さいたま市の事故は他人事ではなかった

さいたま市にある通所介護施設で、雇用されていた運転手が施設の敷地内で事故を起こし、利用されていた方がお亡くなりになる悲惨な事故が起きてしまいました。 その後の報道では、事故を起こした職員は履歴書や運転免許証を偽造した疑いがあり、本当は75歳のところを、施設側は68歳だと思い込んでいたそうです。 運転免許証のコピーの提出を受け、それを信じてしまったと代表の方が話しており、会社の落ち度だと認めていました。 通所系サービスだけではなく、入所施設でも通院や行事などの際に車で送迎を行う事は一般的なことなので、常に交通事故のリスクを抱えており、介護施設関係者は他人事ではないと皆さん思ったはずです。もちろん僕もその一人ですが、僕にはごく最近「運転免許証偽造」で痛い目にあったばかりで、そちらの方でも他人事ではありませんでした。

一昨年の10月に、介護職員として働きたいと30代の女性Aから連絡がありました。介護施設での経験があり、会って話した感じも悪くないと思ったのでAを採用し、フルタイムの職員として12月より勤務してもらいました。土日祝祭日も積極的に勤務してくれ助かったのですが、採用時に提出してもらう運転免許証をなかなか提出してもらえず、少しだけ「あれれ?」とは思ったものの、住民票で本人確認できていたので心配はしていませんでした。数週間後には原本ではなくコピーの提出を受けました。 Aは体調を崩し休むことが多かったのですが、他の職員の急な休みに代わってくれることも多く、仕事自体は真面目にやってくれていました。ただ、提出物の期限をほぼ100%守ることが無く、提出していないのに「提出した」と言い張るなど、最初は本人の勘違いと思っていましたが、次第に「虚言癖があるのかも」と疑い、気をつけてみるようになりました。

今年の春先に、A本人も了解の上でデイサービスの送迎も担当してもらえるように、何度か同行して利用者さんの家を覚えてもらっていたのですが、その矢先に体調を崩してしばらく休むことになりました。 体調も良くなりそろそろ勤務できますと連絡を受けた頃に、警察から電話で「Aを雇用しているか、運転免許証のコピーなどがあるか、運転している所を誰か見たことがあるか」と問い合わせがあり、どれも「はい」と答えると、若い刑事さん二人が来て、様々なことを聴取されました。

刑事さんに聞いた話では、Aは休んでいた間に交通違反で捕まり、運転免許証の有効期限がかなり前に切れていることが発覚(本人はちゃんと更新したと言い張っていたそうです)。その時点では無免許運転の罪だけだったものが、萩の里と、住んでいるマンションの大家さんに偽造免許を提出していたので、「公印公文書偽造」という、けっこう重い罪に問われることになったそうです。

その偽造免許のコピー、刑事さんが見たら一発で偽造だと気づいていましたが、僕には全く分からず、もし次に同じことがあっても騙されると思います。 Aにはその後何度も連絡を取り、とにかく一度来て事情を話して欲しいと伝えましたが、毎回何かしらの理由(その理由もほとんど嘘だと後日分かるのですが)をつけて「明日行きます」と先延ばしにされ、とうとう一度も来ることは無く、結局弁護士に入ってもらい懲戒解雇としています。 もし交通違反で捕まることが無く出勤していたら、今頃間違いなくデイサービスの送迎業務も行っていたはずです。誰も無免許だと気づかずに...。

さいたま市の介護施設のケースと萩の里では、どちらも運転免許証の原本を確認しなかった点は共通で、僕にも過失があったことは間違いありません。 とは言え、偽造する人が本気で施設を欺こうとすれば、今の技術なら僕程度の素人を騙すことは簡単なのかもしれません。だからこそ施設を運営している者として、採用はもっと慎重に行わなければならないと強く反省しています。

※この件で受けた事情聴取はほとんど若い刑事さんからでしたが、一度警部さんからも聴取されました。おそらく年齢は僕より少し上で、背は同じくらいでしたが、優しい語り口調の中にも何とも言えない迫力がある方で、警部と言えば銭形警部しか知らない僕ですが、「警部ってすごい」と思いました。 刑事ドラマでしか見たことがない取調室に入るという貴重な経験もしましたが、狭い室内には窓が無く、ものすごい圧迫感がありました。 警察署にはエアコンは無く、猛暑の中で眼光の鋭い刑事さんたちが何人もいる部屋を通った時はけっこうビビりました。でもこの方たちのおかげで治安が守られているんですね。警察の皆さん、ほんとうにご苦労様です。